そういう訳でヒデちゃんと俺は、9月の初旬あたりから秋風と共に走り出す。
大山周辺の道路は信号もほとんどなく、緑の中を風にまかせて走る気分は実に爽快である。
10月中旬から11月にかけては、大山は紅葉の真っ盛りとなる。 そして、冬の到来を告げる雪がちらほらと降り出す12月初めまで、俺たち二人は、現代人が忘れかけた自然の美しさや豊かさを、2台のオープンスポーツと共にしっかりと味わうのだ。
車で米子から大山へ上がる途中に、大山トムソーヤ牧場がある。休日ともなれば、子供連れの観光客でにぎわっているが、これもまた、現代人が忘れかけた、動物君たちとの心のふれあいを求めての事であろう。
ひつじ君にやぎ君、ろば君もいる。 放し飼いされている動物君たちの中で、小さな子供達は、時にはウンチを踏みつけたりしながらも本当に楽しそうだ。
ウンチを毛嫌いして、足もとばかりを気にして歩いている若いカップルの姿こそ、なにやら滑稽に見える。彼らにとっては、動物君たちとのふれあいよりも、グッチやケンゾーのブランド靴の方が心配なのであろう。
しかしながら、高いお金を払って手に入れたブランド靴を大切にするのは当たり前のことだ。そうした彼らの心の内をさぐろうとしている自分こそ滑稽にみえる。
話が脱線したようだ。 ウンチの話はどうでも良い。 俺は食べる話をするために、この大山トムソーヤ牧場を紹介しているのだ。
この牧場は動物君たちとのふれあいだけではない。 俺の取っておきの秘密をいよいよ話すことにする。
この牧場の何てことはないレストラン、いや、食堂と言った方が良い。 この何てことはない食堂に腰かけて、ここの名物"かもうどん"を注文するのだ。
年配の、少しばかり落ち着きのある女性が注文を受けてくれる。 よく教育された、どこかのハンバーガーショップのお姉さんとは違って、やさしそうな笑顔とともに、心から俺たちに接してくれるのだ。
そう、俺の取っておきの秘密、それは大山トムソーヤ牧場のかもうどんの事である。
ここのかもうどんは、現代人が忘れかけた、昔なつかしい味を俺たちに思いださせてくれる。
土中から取れたごぼうの泥くささが、かも肉の油とみごとに中和して、何とも表現しがたい絶妙な味覚を楽しませてくれるのだ。
とにかくうまい! 一杯のお値段は700円であるが、値段以上の喜びを味わう事が出来るであろう。
かもうどんと言うからには、もちろん夏の時期はやっていない。 寒い時期を目がけて、大山トムソーヤ牧場の名物として登場してくる。
毎年10月の初めから、翌年の3月いっぱいまで楽しむ事が出来るのだ。
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